今回すごい感じたのは、韓国ミュージカルって、
やっぱり常によりよい物を作り出そうという
その姿勢や向上心が素晴らしいなということです。
果敢にチャレンジするんですよね。
それを強く感じたのは『マタハリ』です。
この作品は韓国の制作会社EMKが
初めて大型の創作作品として制作したものですが、
2016年に韓国で初演が行われました。
私はその初日に観たのですが、
そのときから、
観客や周囲のフィードバックを受けて手直しされ、
2か月半ほど過ぎた公演期間の終盤に観たときは、
かなり良い変化を遂げていたものでした。
で、それが翌年に再演された時
初演とは別もののようにガラリと構成を変えていて
それはもうびっくりしたのですが、
今回3演目に当たって更に改変を加えて、
初演とも再演とも全く違う第3案を出してきたのです。
え~また変えてきた!と
またまたびっくりです。
だって初演も再演もちゃんと評価を得てるんですよ。
韓国の創作ミュージカルに与えられる賞の
イェグリンミュージカル大賞で
今年のミュージカル賞をはじめ数々の賞を受賞しましたし、
観客動員もよかったんです。
それに再演バージョンは
日本にもライセンス輸出して
すでに2度にわたって演じられてきたというのに…。
これで良しとしてもいいぐらいなところを
また大幅に変えてきていて、
そこがびっくりしました。
どう変わったかというと、
初演と再演のいいとこ取りをして
マタ・ハリの恋の相手となるアルマン周りの設定を
大胆に変えてました。
ネタばれしてもいい方はこの文の最後の方に
具体的な変更点を書きますね。
またマタ・ハリの心を投影した少女の存在が
新たに加わり、
踊りのみでマタ・ハリの心情を表現する形になっていました。
これは『モーツァルト』におけるアマデのようなイメージですね。
新たな曲も追加されたり、
再演で削られた曲が復活していたり、
そして構成も変更されて、
マタ・ハリが愛する男性のためにスパイになり、
自ら犠牲になった~という要素を強めて描いていました。
だからラストがより切なく泣けるようになっていて、
私も鼻すすって泣いちゃいました。
一方で、再演ではカットされてとても寂しく思っていた
「寺院の踊り」が復活して
たっぷり見せてくれたのもうれしかったです。
やはりこのダンスこそが
マタ・ハリのマタ・ハリたるゆえんなので。
神秘的で一枚一枚身に着けた布をはぎ取っていく
セクシャルなダンスなのですが、
とても魅惑的で、
私はこの踊りを見たくて通いたいくらいでした。
とにかく、
新しい創作作品だと製作者たちが元気なので
もっとここは新しく曲を加えていこうとか
こういう場面をつけたそうとか
どんどん良くしていこうという
クリエイティブな意欲っていうのが
働くんだなって思いました、
だから大胆な改変もいとわないというか、
むしろ好んでやっているところがあるなあと思いました。
そしてあー、あれなくなっちゃったのか
っていう場面はありながらも、
総じて、すごく良くなっていたので
あの、まあよかったんだなって思いました。
初演から演じているオク・チュヒョンさんも
インタビューで、
正直今回が一番気持ち的にしっくり来て
演じやすいと語っていましたからね。
<各キャストの印象>
オク・チュヒョンは もうマタ・ハリ そのものっていう感じで、
演技が素晴らしかったです。
細やかに表情を変化させて心情の移り変わりが
手に取るようにわかりますし、
コケティッシュで艶やかで
堂々としていながらも愛らしいのです。
特に今回は歌い上げより、
終始心情に寄り添った歌い方という気がして、
ラストの曲でパワー全開にして締めくくるように
調整してるのかなと感じました。
やわらかく甘やかな声がまた好きなんです。
男心をくすぐるしゃべり方も魅惑的で。
MAMAMOOのソラも初ミュージカルにして
主演という重責を見事に果たしていたなと思います。
さすがKPOPスターだけあって踊りもこなれてるし
歌もいいし、いやもうアイドルたちの能力の高さには
本当舌を巻きますね。
個人的に、オク・チュヒョンのマタ・ハリを見慣れている目には
華奢というか、か弱さが感じられるマタ・ハリになっていました。
イ・ホンギのアルマンはとってもチャーミング。
大人なユーモアとか余裕もありながら
包容力もあって素敵なアルマを演じてました。
そしてロマンチック王子だったんですよね。
ポロポロ涙を流して愛に生きる男でした。
ユン・ソホのアルマンは誠実で真っ直ぐで、
包み込むような暖かさを兼ね備えている青年
っていう感じがすごくよくて、
とっても素敵な凛々しいアルマンでした。
オク・チュヒョンとのケミストリーも
とってもよくて、
切々たるカップルになっていて、
最後本当に泣かされました。
キムソンシクは純粋さが際立っていて
彼もすごくよかったです。
なんかいい意味で純粋バカみたいな感じが
1番強かったですね。
ソホさんが凛々しさが際立っていたとしたら、
ソンシクさんはそこにもっとこう
丸やかな純粋さがある、っていう、
そんな感じでした。
チェ・ミンチョルはすごいスタイリッシュ。
スタイルもいいし、身のこなしがダンディなんです。
ドラマの『私の解放日誌』では
ソン・ソック演じるク氏を追い詰める悪役なんですけど
ミュージカルの舞台ではこんなにダンディなんですよ
というところをみんなに見てもらいたいですね。
キム・パウルの大佐もスマートで、
苦み走った顔がちょっとリュ・ジョンハンさんを思わせて
個人的にチョイ萌えしました。
●以下<主な変更点>ネタバレします
初演と再演のアルマンは、
ラドゥー大佐の密命を帯びて
マタ・ハリとの出会いからして
仲間と芝居をして近づき、親しくなるのです。
でもマタ・ハリと会い続けるうちに本当に愛してしまい
命令と愛のはざまで葛藤していきます。
そしてラドゥー大佐に嘘の報告をしているのがバレて
死地に送られます。
そんなことを知らないマタ・ハリは、
命がけでアルマンが負傷して入院している
ベルリンの病院に行って再会を果たすのですが、
そこでの会話で、
アルマンがラドゥー大佐の命令で自分に近づいたと知り
ショックを受けて、
アルマンの話を聞こうともせずパリにっ戻ってきます。
そしてスパイの罪で逮捕され裁判になるのですが、
その裁判の場所にアルマンが駆け付け
ラドゥー大佐の非道を訴えるのですが
そこでのどさくさで銃で撃たれて亡くなってしまうのです。
(ここは初演では、もう亡くなったアルマンが
幻で裁判に現れる設定でした)
マタ・ハリは最後に
アルマンの自分への気持ちが本物だったと確信するも
永遠の別れとなるのです。
その後はもう最愛の人を亡くして
生きていてもしょうがない的な感じで
最後、あの世でアルマンと幸せになることを夢見て
処刑される~というのが初演と再演における
アルマンの設定でした。
これがどうなったかというと、
アルマンは今回は死なないのです。
なので、オープニングが、
マタ・ハリが亡くなってから37年後なのですが、
解剖学博物館でマタ・ハリの頭部が展示されることになっていたのに
何者かに持ち去られたらしいところから始まるのですが、
マタ・ハリの悪口を言っている記者たちの前に
年老いたアルマンが現れ、彼女はそんな人じゃない!
と怒ってマタ・ハリのことを思い出す~
というところで
マタ・ハリが生きていたころの時代に
場面が変わるという構成になっています。
そしてアルマンは
誰からの命令ということもなく、
純粋にマタ・ハリと出会います。
これは初演の時と同様に、
操縦していた飛行機が川に落ちたのを
マタ・ハリが助けるという場面でした。
ここで、「飛行機オタクの変な奴~」
と最初は思っていたマタ・ハリが
あまりにも瞳を輝かせて空の魅力を語るアルマンに
ちょっと惹かれていってるな~
ということがわかる場面になっていました。
そして二人の純粋なラブラブが続くのですが、
マタ・ハリの舞台を見に来たアルマンとラドゥー大佐が
鉢合わせして、
マタ・ハリと親し気にしているアルマンを見て
「誰だ君は?」と
ラドゥーから目をつけられたアルマンは呼び出されます。
ラドゥーは、
なかなかスパイになることを承知しないマタ・ハリに
業を煮やしていたのですが、
嫉妬半分、いやがらせ半分な感じで
このアルマンを死地に赴かせるのです。
で、2幕に入り、
アルマンを助けてほしい一心で
マタ・ハリは、スパイでも何でもやるから
アルマンの居場所を教えてほしいとラドゥー大佐に訴えて
ようやくスパイ活動を行うことになっていました。
自分の過去が暴かれると脅されてスパイをやった
それまでの舞台と違って、
今回はアルマンのためにスパイになるのです。
そしてスパイ任務を終えたマタ・ハリは
ラドゥーと会話する中で、
アルマンは自分のために危険な任務に就かされたのだと
悟るのです。
そして命がけでベルリンの病院に会いに行くところは
同じです。
再会し愛を確認し合いますが、
アルマンから、ここは危険だからパリに戻るようにと説得され
しぶしぶ戻ったマタ・ハリがスパイ罪で逮捕されます。
で、裁判でアルマンが証人として現れるのですが、
拳銃をラドゥーに突き付けて一触即発になった二人を
ハラハラしながら見ているうちに、
このままではアルマンに危険が及ぶと察知したマタ・ハリが
覚悟を決めて、「私がやりました」と罪をかぶるんです。
牢獄にいるマタ・ハリにアルマンが面会に来た時も、
必ず無実を証明すると息巻くアルマンに、
真実はどうでもよくて犠牲者が欲しいのだから
自分がその犠牲者になると言って
「あなたは長生きしてね」と言い残して処刑されるんです。
なので、
あくまでも愛のためにスパイになり、
愛のために自らを犠牲にして逝った女性、
純粋に愛し合い、悲しい別れを遂げた恋人たち
という感じになっていました。
マタ・ハリと衣装係のアンナとの出会いも描かれていて
パリに来たばかりで行き倒れていたマタ・ハリを助けて
家に住まわせたのがアンナで、
その時に夢の中で踊っていた彼女の踊りを見て
神秘的な名前を付けて舞台で踊ればいい!
と提案したところからマタ・ハリ伝説が始まった~
という描き方をしていました。
という感じで、
大幅に変わっているのですが、
こうなると気になるのは、
今度日本で『マタ・ハリ』が上演されるとき
やっぱりこの最新バージョンになるんですよね?
ってところです。要注目ですね^^
ソウルでの観劇レポを含めた内容を
ちかちゃんねる☆韓流本舗でも語っています。
こちらご覧ください~。
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【韓ドラ・マスター親世と尚子の感想語り】
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【ちかちゃんねる☆韓流本舗】
2022年9月6日執筆