私がいちばん綺麗だった時

【ドラマ概要】

ヤンピョンという自然豊かな地域を舞台に繰り広げられる、
一人の女性と、彼女を同時に愛していく兄弟が繰り広げていく
7年にわたる胸の痛む愛の物語。

幼いころから恵まれない生い立ちで
複雑な家族関係の中で育ってきたヒロイン、イェジ(イム・スヒャン)。
そんな彼女を兄と弟がそれぞれ異なる愛し方で
彼女を不遇な環境から救い出そうとしていきます。

うんざりした過去のトラウマや愛から逃れるように
イェジを愛していく兄のジン(ハ・ソクジン)は、
大人の男性の包容力と自信を背景に、
率直な告白と強引さで
彼女を暗闇から救い出す王子のごとくに振る舞い、

一方の弟のファン(ジス)の方は、
年上の美しい教育実習の先生への憧れが恋心に変わり、
やがて深い愛を抱きながら、
常にナイトのようにイェジに心を寄せて
守っていくことになります。

タイプの違う男性が一人の女性を巡っていく三角関係は
韓国ドラマの定番ですが、
このドラマではその男性たちを兄弟に据えたところが
禁断のタブー感をさらにかき立てます。



【見どころ&感想】

韓国ドラマの真骨頂である
「愛」と「やるせなさ」と「純愛」が
しっかりと描かれている作品で、
人物たちの胸を打つ心情に、
久しぶりにしっとりじっくり味わった~と思える余韻が
ハンパないドラマでした。

ダメだとわかっていてもどうしようもなく惹かれてしまう想い。
頭では理解しても心で許すことができない複雑な心。
愛しているのに自信を失い卑屈になってしまう男心。
どうしても手放せない執着。
一筋縄ではいかないすれ違い。
相手を思うがゆえに真実を言い出せず
誤解していく親子の情など、
男女間に留まらず、親子関係も丁寧に描かれ、
繊細な心の機微が、説得力を持って胸に迫ってきます。

そんな、切実で煮詰まった心を抱えた人々が
緊張感あふれるやり取りを繰り広げていくのですが、
こうしたある意味古典的なメロドラマが描かれても
しっくり来てしまうのは、
水彩画のように美しい舞台背景の効果が大きいです。

光、緑、陶芸、ゆったりとした時間の流れ、
虫の声、小川のきらめき、蓮の浮かぶ池、
煌々たる月明かりに照らされた夜の湖などなど、
情緒を豊かに広げてくれるアイテムが
そこここにちりばめられていて、
ここぞという時に
シューベルトの「セレナーデ」が流れるものだから、
つい『夏の香り』を彷彿させます。

まさに、純愛ドラマに飢えていた世代には、
待ってましたという世界観が展開されて行きます。

大人のこなれた世界にいる兄と、
純粋な世界にいる弟の愛という
兄弟の対比もよくて、
兄は、煮詰まっている状況を打破したくて、
女性に救いと癒しを求め、
弟のほうは、純粋に彼女を守ってあげたいということで、
常にナイトのように支えていく。

ハン・ソクチンがちょっと大人な、
清いだけではない、ただれた愛も経験済みの男みたいな感じ。

個人的にはジスの演じた弟の、
一人の女性を守り続けた思いが尊くて好きでした。

「なんで僕はもっと早くあなたに会わなかったんだ、
なんで僕はまだ若いんだ」と歯がゆい思いをぶつけたり

大人ぶりたくて
「僕のことを怖がってください。子どもじゃないんだ。
兄さんとキスしたりしないで。誰とも抱きあったりしないで」
というまっすぐな告白に、もう胸打たれるのです。

ヒロインは兄を選び結婚するので、
兄と弟、そしてヒロインの3人が
一つ屋根の下で過ごす場面もあるのですが、
愛の火種が家の中にあるから、
観ていて緊張感がハンパないんです。

暗黙の了解のなかで、
危ういところで平衡を保ってきていた家族の平和。
それぞれがそれを守ろうとするのですが、
時に爆発してしまうという抑えきれない熱情。
そんな3人のあいだに漂う空気間がよくて、
これぞ恋愛ドラマの醍醐味が味わえます。

中盤で兄弟がまた違った姿に変化していくのが
またこのドラマの見どころ。
関係性が微妙に変わった3人がどうなっていくのか、
ますます緊張感が高まっていく過程が堪能できます。